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ストレスチェックの集団分析は努力義務——何をどこまでやればいいか

最終更新: / United World Counseling 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)

ストレスチェックの集団分析と職場環境改善は、労働安全衛生規則第52条の14に基づく事業者の努力義務で、個人結果の守秘とは別の規定です。厚生労働省は、分析結果を業務内容や労働時間など他の情報と合わせて評価し、職場環境改善につなげることを示しています。2027年4月1日施行の改正では、集計を「特定の個人を識別することができない方法」で行うことが条文に書き込まれます。

ストレスチェックの集団分析とその結果に基づく職場環境改善は、労働安全衛生規則第52条の14(2026年11月時点の条文。2027年4月1日施行の改正あり)が定める事業者の努力義務です。個人の結果を本人の同意なく事業者に提供してはならないという守秘の規定とは別のものです。

厚生労働省は、集団分析の結果を他の情報と合わせて評価し、職場環境改善につなげることを示しています。実施はしたが結果を活用せずに終えている企業は、この手前で止まっている状態です。

集団分析と個人結果の守秘は、別の規定です

個人のストレスチェック結果は、労働安全衛生法第66条の10第2項(2026年11月時点の条文)により、検査を行った医師等が、本人の同意を得ないで事業者に提供してはならないとされています。これに対して集団分析は、部や課など一定規模の集団ごとに集計・分析し、職場環境改善につなげるための規定で、対象は個人ではなく集団です。個人の結果は守るべき情報、集団の分析結果は使うべき情報、という整理になります。

法令上の位置づけ:労働安全衛生規則第52条の14

労働安全衛生規則第52条の14第1項(2026年11月時点の条文)は、次のように定めています。

「事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。」

出典:労働安全衛生規則 第五十二条の十四第一項(e-Gov法令検索、2026年11月3日時点の条文)

「努めなければならない」という書き方が、努力義務であることを示しています。厚生労働省の解説も、次のように説明しています。

「また、会社は、ストレスチェック結果を、部や課、グループなどの一定規模の集団ごとに集計・分析した結果等を踏まえて、職場環境の改善を行うことが努力義務となっています。」

厚生労働省「確かめよう労働条件」ストレスチェック解説ページ

「努力義務」は「やらなくていい」ではない

同じ解説ページが「罰則の適用」として挙げているのは、集団分析ではなく、実施者などの秘密の保持に関する規定です。

「ストレスチェックの実施者・実施事務従事者、面接指導の実施の事務に従事した者は、ストレスチェックや面接指導の実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないという罰則規定が設けられています。」

厚生労働省「確かめよう労働条件」ストレスチェック解説ページ

ただし、罰則の話と、対応しなくてよいかどうかは別の問題です。集計して終わりではなく、評価して、変えるところまでが努力義務の射程です。

集団分析をして終わっている企業に共通する3つのパターン

集団分析まで実施している企業でも、そこから先の対応が止まっているケースには、共通した型があります。

集団分析後によく見られる3つの停止点

  • 集計止まり部署ごとの点数は出したが、業務内容や労働時間など他の情報と突き合わせて評価する段階に進んでいない。
  • 報告止まり分析結果を経営や管理職に報告したところで終わり、職場環境を変える具体的な対応に落とし込まれていない。
  • 研修止まり対応は一般的な研修の実施にとどまり、高ストレスが出た部署の社員が実際に相談できる窓口の整備には及んでいない。

分析結果を職場環境改善につなげる進め方

集団分析の結果は、単独で見るのではなく、当該部署の業務内容や労働時間などの情報と合わせて評価し、必要な対応を検討する流れになります。

「集団分析結果と、当該部署の業務内容や労働時間など他の情報と合わせて評価し、職場環境改善につなげることによって、職場のストレスが低減され、生産性の向上につながる可能性があります。」

厚生労働省「確かめよう労働条件」ストレスチェック解説ページ

研修や人員配置の見直しは代表的な対応ですが、それだけでは「個人が実際に相談できる状態」までは届きません。高ストレスだと分かった部署の社員が、上司やHRを介さずに話せる窓口があるかどうかは、対応の幅を大きく左右します。

10人未満の部署を分析するときの注意点と、2027年4月1日施行の改正

集団分析は、個人を特定できない方法で行う必要があります。特に10人未満の部署を分析する場合は注意が必要です。

「10人未満の集団で分析する場合は、すべての合計点について集団の平均値だけを求めるなど、個人特定につながらない方法をとる必要があります。」

厚生労働省「確かめよう労働条件」ストレスチェック解説ページ

この考え方は、2027年4月1日施行の改正で条文にも書き込まれます。e-Gov法令検索に掲載されている改正後の第52条の14第1項は、次のとおりです。

「事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに、特定の個人を識別することができない方法で、集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。」

出典:労働安全衛生規則 第五十二条の十四第一項(e-Gov法令検索、2027年4月1日施行の改正後の条文)

改正後も「分析させるよう努めなければならない」という努力義務の形は変わりません。変わるのは、集計の方法として「特定の個人を識別することができない方法」が条文に明記される点です。

小規模集団を分析するときに確認すること

  • 10人未満の集団は、すべての合計点について集団の平均値だけを求めるなど、個人が特定されない集計にとどめる。
  • 部署名や人数から誰の結果か推測できる集計単位を避け、必要に応じて集団を括り直す。
  • 2027年4月1日施行の改正後も、努力義務であること自体は変わらないという前提で運用を見直す。
  • やってはいけないこと:少人数部署で個人ごとの点数や順位を資料に残す。
  • やってはいけないこと:部署名と結果を結びつけて管理職にそのまま共有する。

高ストレス部署が判明したときにできること

集団分析で特定の部署の高ストレスが明らかになったとき、選べる対応は一つではありません。

高ストレスの部署が分かったときの対応の選び方

  • 業務量や業務内容そのものに課題がある業務の再配分や人員配置の見直しを検討する
  • 管理職との関係や職場の対人関係が要因に見える管理職向けの研修に加え、社員が直接話せる相談の場を用意する
  • 社員が上司やHRを介した相談に抵抗を感じていそうな部署である社内窓口に加えて、社外の相談窓口を選択肢として案内する

とくに3つ目は見落とされがちです。厚生労働省の資料も、社内の窓口に抵抗のある従業員がいる可能性に触れています。

「社内相談窓口に相談することに抵抗のある従業員もいる可能性がありますので、社外相談窓口の設置についても併せて検討しましょう。」

出典:こころの耳「社内相談窓口設置までの流れとポイント」

社外の相談窓口を選択肢に加えることは、研修や人員配置の見直しと並ぶ、職場環境改善の具体的な一手になります。高ストレス者への面接指導の申出が少ない場合の考え方は、高ストレス者が面接指導を申し出ないときで整理しています。

まとめ

集団分析の努力義務が求めているのは、集計そのものではなく、集計した結果をもとに職場を変える行動です。守るべきは個人の結果であり、使うべきは集団の分析結果です。自社の集団分析が集計で止まっていないか、特定の部署に対応が必要な状態が見えているか、そして社員が実際に相談できる窓口まで用意されているかを、一度確認してみてください。

よくあるご質問

ストレスチェックの集団分析は、やらなくても罰則はありますか?

集団分析とそれに基づく職場環境改善は、労働安全衛生規則第52条の14で事業者の努力義務とされています。厚生労働省の解説ページが「罰則の適用」として挙げているのは、ストレスチェックの実施者などが、実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないという規定です。罰則の有無とは別に、分析結果を職場環境改善につなげることが制度の狙いです。

集団分析と、個人のストレスチェック結果の守秘は同じルールですか?

別の規定です。個人の結果は、労働安全衛生法第66条の10第2項により、検査を行った医師等が本人の同意を得ないで事業者に提供してはならないとされています。集団分析は、部署など一定規模の集団ごとに集計・分析するよう努めるという、労働安全衛生規則第52条の14の規定です。

10人未満の部署も集団分析の対象にできますか?

厚生労働省は、10人未満の集団で分析する場合は、すべての合計点について集団の平均値だけを求めるなど、個人特定につながらない方法をとる必要があるとしています。2027年4月1日施行の改正後は、集計を「特定の個人を識別することができない方法」で行うことが、第52条の14の条文に書き込まれます。

集団分析の結果が出たら、まず何をすればいいですか?

厚生労働省は、集団分析結果を当該部署の業務内容や労働時間など他の情報と合わせて評価し、職場環境改善につなげることを示しています。点数だけで判断せず、業務量や働き方の情報と並べて見ることから始めます。

2027年4月の改正で、集団分析は義務になりますか?

e-Gov法令検索に掲載されている2027年4月1日施行の改正後の条文でも、第52条の14は「分析させるよう努めなければならない」という努力義務の形のままです。変わるのは、集計を特定の個人を識別することができない方法で行うことが、条文に明記される点です。

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出典

  1. ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策 原文

本記事は一般的な説明です。個別の事案における法令の適用および解釈については、所轄の労働基準監督署、産業保健総合支援センター、または専門家にご確認ください。