パワハラかもしれないと思ったら—相談前に今日からできる記録の残し方
パワハラかもしれないと感じたら、相談するかどうかを決める前に、いつ・どこで・誰から・何を言われたかを事実と気持ちを分けて書き留めておくことが最も役立ちます。会社には相談を受けたときの迅速な事実確認が求められており、本人の記録はその確認を助けるものになります。
パワハラを受けているかもしれないと感じたとき、誰かに相談する前に一番役に立つ準備は、集めたものが証拠として十分かどうかを考えることではありません。いつ・どこで・誰から・何を言われたか(されたか)を、気持ちと分けて書き留めておくことです。会社には、相談を受けたときに迅速に事実関係を確認することが求められているからです。
相談する前に知っておきたいこと——相談を受けた会社が確認するのは「事実関係」
職場のパワハラについて、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第三十一条(2026年10月1日施行、旧第三十条の二)は、事業主に次のことを求めています。
「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう」
出典:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第三十一条(2026年10月1日施行、旧第三十条の二)
条文は、「ひどいかどうか」という感想ではなく、言動の中身(優越的な関係を背景としているか、業務上必要かつ相当な範囲を超えているか)で書かれています。ある出来事がこれに当たるかどうかを決めるのは、あなた自身でもこの記事でもありません。ただ、相談を受けた側がまず確かめるのは、どのような言動があったかという具体的な事実です。会社側には、次のような対応が求められています。
「パワハラ防止の方針の明確化、相談窓口の設置、迅速な事実確認等が求められます。」
出典:令和2年6月1日からパワーハラスメント対策が義務となりました!~改正労働施策総合推進法が施行~(青森労働局)
「迅速な事実確認」が求められている以上、相談を受ける側が一番知りたいのは、いつ・どこで・何があったかという具体的な事実です。相談するかどうかをまだ決めていない今の段階でできる最も役立つ準備は、その事実を記録しておくことです。
今日からできる記録の残し方:いつ・どこで・何を言われたか
記録は、相談を決めてから始めるものではありません。相談するかどうか迷っている今日から始めて構いません。1回だけでなく、同じようなことが起きるたびに続けて記録しておくと、後で事実を思い出すときの助けになります。
記録から相談までの流れ
- 起きたその日に書くいつ・どこで・誰から・何を言われたか(されたか)を、気持ちを交えずに書き留めます。
- 起きるたびに続ける一度だけでなく、繰り返し記録しておくと、後で振り返りやすくなります。
- 関連する記録も残すメールやチャットのやり取り、着信履歴など、残っているものは消さずに保存します。
- 相談先を選ぶ社内の窓口か、社外の窓口かを、記録を見ながら考えます。
メモに何を書けばいいか:書き方の具体例
メモには、次の要素を分けて書くと後で読み返しやすくなります。「いつ(日付と時間)」「どこで(場所)」「誰から(言った人)」「何を言われたか、されたか(具体的な言葉や行動)」「そのとき近くにいた人」。例えば、「10月◯日、午後3時ごろ、会議室で、◯◯さんから『そんなこともできないのか』と大声で言われた。同席していたのは△△さん」のように、聞いたとおりの言葉をそのまま書きます。評価や感想(「ひどいと思った」「許せない」)は、事実とは別の欄に分けて書くか、省いて構いません。
録音・メール・LINEのスクリーンショットも記録の一つになる
文章のメモだけが記録ではありません。やり取りの残っているメールやチャットのメッセージ、着信履歴なども、いつ・何があったかを示す記録の一つです。消さずに保存しておきましょう。それぞれを相談の場でどう使うかは、相談先と話しながら決めれば十分です。まずは、残っているものを失わないようにすることが先です。
書くときに気をつけたいこと:事実と気持ちを分ける
メモを書くときに最も大事なのは、事実と気持ちを分けることです。「許せない」「つらかった」という気持ちも大切な記録ですが、それと「何を言われたか」という事実を混ぜて書くと、後から事実だけを取り出しにくくなります。気持ちを書きたいときは、事実のあとに別の行として書く、あるいは日付の横に一言だけ添える程度にしておくとよいでしょう。
メモに書くときのポイント
- いつ・どこで・誰から言われたか(されたか)を書く
- 言われた言葉やされたことを、そのまま書く
- そのとき近くにいた人がいれば、名前や立場を書く
- 書いてはいけないこと:「ひどいパワハラだった」という結論だけを書く
- 書いてはいけないこと:後から記憶で日時や内容を書き換える
記録ができたら、次に考えられる相談先
記録ができていれば、社内の相談窓口に限らず、社外の相談窓口に話すときにも事実を伝えやすくなります。社外の相談窓口について知っておくと、社内で相談しにくいと感じる場合の選択の一つになります。
誰に相談するか迷うときは、仕事の悩みを誰に相談するかを整理した記事も参考にしてください。
当サイトは労働局でも法律事務所でもなく、個別の出来事がパワハラに当たるかどうかの判断は行いません。公的な相談先としては、各都道府県労働局や労働基準監督署内などに設けられた総合労働相談コーナーがあり、パワハラも相談の対象として挙げられています。
「解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。」
出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
ほかの公的な相談先は、厚生労働省が運営する相談窓口案内ページ(こころの耳 相談窓口案内)で探せます。
まとめ:記録は「訴えるため」ではなく「事実を思い出せるようにするため」
記録を残す目的は、誰かを訴えるための証拠を集めることではありません。後で事実確認を求められたときに、自分の記憶だけに頼らず、いつ・どこで・何があったかを答えられるようにしておくことです。相談するかどうかをまだ決めていなくても、今日からその記録を始めることはできます。
まずは、今日あったことを一つ、日時と場所と言われた内容だけで構いません。書いてみることから始めてみてください。
よくあるご質問
録音していないと、相談しても意味がないですか?
いいえ。会社には、相談を受けたときの迅速な事実確認が求められています。日時・場所・内容を書き留めたメモも、何があったかを伝えるときの手がかりになります。
メモにはどこまで細かく書けばいいですか?
いつ・どこで・誰から・何を言われたか(されたか)という事実を、感想を交えずに書きます。1回だけでなく、起きるたびに続けて記録しておくことが役立ちます。
まだ誰にも相談していませんが、記録だけ先に始めてもいいですか?
はい。相談するかどうかを決める前に記録を始めても問題ありません。むしろ、相談を決めた時点で記録が残っていると、事実確認がスムーズになります。
記録したメモは、会社や相手に見せなければいけませんか?
いいえ。記録は、まず自分が後で事実を思い出せるようにするためのものです。誰に相談するか、相談のときにメモを見せるかどうかは、自分で決めて構いません。
この出来事がパワハラに当たるかどうか、どこで確かめられますか?
当サイトやこの記事では、個別の出来事がパワハラに当たるかどうかの判断は行いません。公的な窓口として、各都道府県労働局などに設けられた総合労働相談コーナーが、パワハラを含む労働問題の相談を受け付けています。ほかの公的な相談先は、厚生労働省の「こころの耳 相談窓口案内」で探せます。
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