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従業員のメンタルヘルス対策、何から始める?企業規模別に法的義務を整理

最終更新: / United World Counseling 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)

安全配慮義務とハラスメント相談体制の整備義務は、企業規模にかかわらずすでにすべての企業にかかっています。ストレスチェックは常時50人以上の事業場で法定義務ですが、50人未満は現在努力義務の段階にあり、令和7年法律第33号による見直しが進んでいます。

結論から先に言うと、会社の規模によって答えが変わります。安全配慮義務と、ハラスメントに関する相談体制の整備義務は、規模を問わずすべての企業にすでにかかっています。一方でストレスチェックの実施義務は、常時50人以上の事業場にはすでに課されていますが、50人未満の事業場は今のところ実施が望ましいとされる段階です。「何もしていない」がただちに違法とは限りませんが、「自社に何がかかっているかを知らない」ままではいられません。

厚生労働省の統計でも、心の健康に関する労災請求は増加が続いています。

精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移0件2,000件4,000件6,000件令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度令和7年度請求件数支給決定件数
精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移(業務災害)
項目 請求件数 支給決定件数
令和3年度 2,346件 629件
令和4年度 2,683件 710件
令和5年度 3,575件 883件
令和6年度 3,780件 1,056件
令和7年度 4,958件 1,082件
精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移出典:厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』」別添資料2 表2-1・図2-1(2026-09-05取得) 労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害

すべての企業に例外なくかかる義務がある

会社が労働者を雇用する以上、労働契約に伴って安全配慮義務を負います。従業員が心身ともに安全に働けるよう配慮する、企業規模を問わない一般的な義務です。これに加えて、ハラスメントへの対応は、相談体制の整備そのものがすでに法律上の措置義務になっています。

「これらの措置は、業種・規模に関わらず、すべての事業主に義務付けられています。」

厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

求められる措置の内容は、厚生労働省のパンフレットに次のように整理されています。

「事業主が雇用管理上講ずべき措置■事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発■相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備■ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応■併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)」

厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策」パンフレット

つまり「相談を受け付ける体制の整備」自体は、従業員が何人であっても、すでに法律上の義務です。メンタルヘルス対策を何も始めていないつもりの会社でも、この部分はすでに義務の範囲に入っている可能性があります。

50人以上の事業場では、産業医選任とストレスチェックがすでに法定義務

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任し、ストレスチェックを実施することが、すでに法律上の義務です。これは今回の改正とは関係なく、以前から変わらない基準です。実施していない状態が続いているなら、それは「これから検討する」段階ではなく、是正すべき状態にあります。

自社はどこに当てはまるか

まず自社の状況を確認する

  • 常時50人以上の労働者を使用する事業場である産業医選任とストレスチェックの実施はすでに法定義務。未実施であれば早急に是正が必要。
  • 常時50人未満で、ハラスメント相談窓口も方針表明もまだないストレスチェックの実施義務はまだ生じていないが、相談体制の整備義務はすでに生じている。方針の文書化と相談先の周知から着手する。
  • 常時50人未満で、すでに相談窓口や方針表明がある現時点で追加の法定義務はない。改正法の適用時期を確認しながら、次の一歩を検討すればよい段階。

50人未満の事業場でも「義務ゼロ」ではない

「うちは50人未満だから何もしなくていい」という理解は誤りです。上で見た通り、ハラスメント相談体制の整備義務は規模を問わずかかっています。加えて、ストレスチェックについても、50人未満の事業場が今のまま何もしなくてよい期間は終わりつつあります。

50人未満のストレスチェックが変わる時期

令和7年の法改正の出発点は次の通りです。

「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が第217回国会で成立し、令和7年5月14日に公布されました(令和7年法律第33号)。」

厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」ページ

この改正の内容について、厚生労働省は50人未満の事業場向けに次のように説明しています。

「令和7年の労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場(小規模事業場)におけるストレスチェックの実施が義務とされました。」

厚生労働省「ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)」こころの耳

ここで正確に押さえておきたいのは、「これまで努力義務だったものが、今回の改正で義務に変わった」という順序です。50人未満の事業場は、これまでは実施が望ましいとされる段階にとどまっていました。ただし、具体的にいつからこの義務が適用されるのかという施行の詳細は、本稿執筆時点で一次情報として確定的に引用できる形では公表されていません。「もう義務になった」と早合点して急ぐ必要はありませんが、「50人未満は今後も努力義務のまま」という理解のまま放置してよい段階でもなくなっています。

何から始めるか

費用をかけずに着手できることから始めるのが妥当です。厚生労働省の指針が示す「4つのケア」(セルフケア/ラインによるケア/事業場内産業保健スタッフ等によるケア/事業場外資源によるケア)が全体の枠組みですが、最初の一歩はその外側、体制づくりそのものにあります。

コストをかけずに着手できる順番

  1. 方針を文書にする経営層が、メンタルヘルスに関する基本方針を短くてよいので文書化し、社内に示す。
  2. 相談先を周知する人事・総務が、ハラスメントを含め従業員が相談できる窓口と連絡方法を、全従業員に周知する。
  3. 対応を記録に残す人事・総務が、いつ何を検討し、何を決めたか(着手または見送り)を記録として残す。
  4. 該当する場合は法定義務を実施する常時50人以上の事業場は、ストレスチェックを実施する体制を整える。

「今は何もしなくていい」が正しい判断になる場合

常時50人未満で、ハラスメント相談窓口の整備と方針の周知をすでに済ませており、労災や具体的な相談、行政からの指摘といった個別の引き金がない会社であれば、現時点で追加の制度を新たに購入する必要はありません。これは手を抜いているのではなく、義務の範囲を正確に把握した上での判断です。ただし、その判断自体を記録しておくことをすすめます。安全配慮義務は規模を問わず存在し続けるため、「なぜ今は着手しないか」を後から説明できるようにしておく価値があります。

外部の相談窓口を検討するタイミング

方針の文書化と社内窓口の周知という土台ができたら、次に検討するのが社外の相談窓口です。厚生労働省の指針も、相談を受ける窓口を広げることを推奨しています。

「事業者は、ストレスチェック結果の通知を受けた労働者に対して、相談の窓口を広げ、相談しやすい環境を作ることで、高ストレスの状態で放置されないようにする等適切な対応を行う観点から、日常的な活動の中で当該事業場の産業医等が相談対応を行うほか、産業医等と連携しつつ、保健師、歯科医師、看護師若しくは精神保健福祉士又は公認心理師、産業カウンセラー若しくは臨床心理士等の心理職が相談対応を行う体制を整備することが望ましい。」

厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」

社内の窓口だけでは、上司や同僚に知られたくないという理由で相談をためらう従業員が出てきます。社外の相談窓口を用意することは、社内窓口を置き換えるものではなく、社内の体制が整った会社が次に検討する選択肢の一つです。料金については、企業規模やご利用内容等に応じてご案内しています。

まとめ:規模別チェックリスト

自社の体制を確認する

  • 安全配慮義務を踏まえた基本方針を文書にしているか
  • ハラスメント相談窓口を整備し、全従業員に周知しているか(規模を問わず義務)
  • 常時50人以上であれば、ストレスチェックを実施しているか
  • 着手しない領域がある場合、その理由を記録しているか
  • 書いてはいけないこと:「50人未満だから何もしなくていい」と判断すること
  • 書いてはいけないこと:相談窓口を作らないまま放置すること

まずは自社が上のどこに当てはまるかを確認してください。制度を購入する前に整理できることは、想像以上に多くあります。体制を整理した上で疑問が残る場合は、具体的な状況をご記入のうえお問い合わせください。

よくあるご質問

従業員が50人未満でも、ストレスチェックは義務ですか。

現行では、常時50人以上を使用する事業場が実施義務の対象です。50人未満の事業場は、これまで実施が望ましいとされる努力義務の段階にとどまってきました。令和7年5月14日公布の改正法(令和7年法律第33号)により将来的な義務化が決まっていますが、施行の時期は本稿執筆時点でこの記事の一次情報として確定的に引用できる形では公表されていません。

産業医がいない会社は、法律上まだ何もしなくていいのですか。

いいえ。ハラスメントに関する相談体制の整備義務は、事業場の規模にかかわらずすべての事業主にかかっています。50人未満=義務ゼロではありません。

何から着手すればよいですか。

厚生労働省の指針が示す『4つのケア』(セルフケア/ラインによるケア/事業場内産業保健スタッフ等によるケア/事業場外資源によるケア)が枠組みですが、費用をかけずに着手できるのは、方針を文書にして周知することと、相談先を従業員に知らせることです。

今のところ何もしなくても、法律違反にはなりませんか。

会社の規模や状況によっては、個別の法定義務がまだ生じていない場合があります。ただし、労働契約に伴う安全配慮義務は規模を問わず存在するため、『今は着手しない』という判断を取る場合も、その理由を記録しておくことが望まれます。

社外相談窓口の選定を進めている段階でしたら

United World Counseling は、企業の従業員向けのオンラインカウンセリングです。何が企業に報告され、何が報告されないかを書面でお示しします。まず条件を確認したい段階でもご相談いただけます。

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出典

  1. ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策 原文
  2. ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)|こころの耳 原文
  3. 職場におけるハラスメントの防止のために 原文
  4. 事業主が講ずべきハラスメント対策(パンフレット) 原文
  5. 心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成27年4月15日 心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号/平成30年8月22日 同公示第3号 最終改正) 原文

本記事は一般的な説明です。個別の事案における法令の適用および解釈については、所轄の労働基準監督署、産業保健総合支援センター、または専門家にご確認ください。