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EAPと社外相談窓口は何が違う?比較表と契約前チェックリスト

最終更新: / United World Counseling 編集部(ユナイテッドワールド株式会社)

EAPは従業員支援の枠組み全体を指す言葉で、社外相談窓口はその中の相談受付機能を社外に委託する形態を指し、両者は同義ではありません。相談体制の整備は労働施策総合推進法に基づく事業主の義務であり、2026年10月1日からはカスタマーハラスメントと求職者等セクシュアルハラスメントへの対応もこの義務の範囲に加わります。

社外相談窓口とEAPは同じではない——まず言葉を整理する

「社外相談窓口」と「EAP」は同じものを指す言葉ではありません。EAP(Employee Assistance Program、従業員支援プログラム)は、メンタルヘルスやキャリア、法律相談などを含みうる、従業員支援のしくみ全体を指す言葉です。これに対して社外相談窓口は、その中の「相談を受け付ける窓口」機能を社外の専門家・機関に委託する形態を指します。EAPサービスの一部として相談窓口が提供される場合もあれば、相談機能だけを切り出して外部委託する場合もあり、両者は重なりながらも同じ範囲を指しているわけではありません。

これから比較検討するのがどちらなのかを最初に決めておかないと、見積もりの段階で範囲の違う商品を横並びで比べることになります。まず法律が求めている最低ラインを確認し、そのうえでどちらの形が自社に合うかを整理します。

法律が求める「最低ライン」——相談体制の整備は努力目標ではなく事業主の義務

精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移(業務災害)精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移(業務災害)0件2,000件4,000件6,000件令和3年度令和4年度令和5年度令和6年度令和7年度請求件数支給決定件数
精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移(業務災害)
項目 請求件数 支給決定件数
令和3年度 2,346件 629件
令和4年度 2,683件 710件
令和5年度 3,575件 883件
令和6年度 3,780件 1,056件
令和7年度 4,958件 1,082件
精神障害の労災請求件数と支給決定件数の推移(業務災害)出典:厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』」別添資料2 表2-1・図2-1(2026-09-05取得) 労働基準法施行規則別表第1の2第9号に係る精神障害

相談窓口の設置は、努力目標ではありません。労働施策総合推進法は、職場のハラスメントについて労働者から相談を受けたときに適切に対応できる体制を整えることを、事業主の義務として定めています(現行の条番号は第三十条の二、2026年9月30日まで。2026年10月1日以降、同じ措置義務は第三十一条に条番号を変えて引き継がれます)。

「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第三十条の二(雇用管理上の措置等)第一項(〜2026年9月30日)

これは規模の小さい会社なら免除される、という話ではありません。

「これらの措置は、業種・規模に関わらず、すべての事業主に義務付けられています。」

職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)

「相談窓口を作るかどうか」を検討する段階ではなく、「どのような相談窓口を、どういう形で持つか」を検討する段階に、すでに入っているというのが法律の立て付けです。

指針が定める4つの措置——御社の相談窓口は何を満たす必要があるか

厚生労働省の指針は、事業主が講ずべき措置を大きく4つに整理しています。

「事業主が雇用管理上講ずべき措置■事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発■相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備■ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応■併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)」

厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策」パンフレット

このうち相談窓口に直接関わるのは2番目と4番目です。相談窓口は連絡先を用意すれば足りるわけではなく、①相談や苦情に「適切に対応」できる体制であること、②相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことが、あわせて求められています。ベンダーを比較する際は、この2点を実際にどう実装しているか——誰が対応し、記録はどこに保管され、相談者の同意なしに社内のどこまで情報が伝わるのか——を確認する項目として使えます。

比較の起点:ストレスチェックのあと、相談窓口はどこまで用意されているか

もう一つの起点は、ストレスチェックです。ストレスチェックの結果を通知したあと、面接指導の申出窓口とは別に、相談できる窓口についての情報提供を行うことが指針で望ましいとされています。

「事業者は、ストレスチェック結果のほか、次に掲げる事項を通知させることが望ましい。①労働者によるセルフケアに関する助言・指導②面接指導の対象者にあっては、事業者への面接指導の申出窓口及び申出方法③面接指導の申出窓口以外のストレスチェック結果について相談できる窓口に関する情報提供」

心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

つまり、面接指導の対象にならなかった、あるいは対象でも申出をしなかった従業員にも、日常的に相談できる窓口を用意しておくことが期待されています。社外相談窓口が担うのは、まさにこの「面接指導の申出窓口以外」の受け皿です。自社のストレスチェックの運用を振り返ったとき、この受け皿が実質的に機能しているかどうかが、比較検討を始める良い出発点になります。

比較表:大手EAPと外部相談窓口、何がどう違うのか

規模や特性による一般的な傾向を整理すると、次のようになります。個々のサービスの実際の仕様は各社への確認が必要です。

大手・多拠点型EAP 小規模・専門特化型の外部相談窓口
対応拠点・言語 複数拠点、複数言語での運用に対応しやすい 拠点・言語は限定的なことが多い
受付時間 24時間・365日の窓口を持つ場合がある 窓口の稼働時間が限られる場合が多い
ストレスチェックとの連携 実施から面接指導、事後措置まで一括で連携しやすい 自社のストレスチェック実施者・産業医との連携を個別に設計することが多い
担当者との関係 相談員が交代制・大人数であることが多い 少人数の担当者と継続的な関係を築きやすい
エスカレーションの経路 複数部門・複数レイヤーを経由することがある 窓口から自社の産業保健スタッフまでの経路が単純になりやすい
導入時の調整範囲 既存の人事システムとの連携など、調整項目が多くなりやすい 調整項目が少なく、立ち上げが早い場合が多い

いずれも一般的な傾向であり、個別のサービスがどこに位置するかは実際の提案・見積もりで確認する必要があります。

大手EAPが正解になるケース——規模・多言語・24時間・ストレスチェック連携

複数の拠点を持つ、あるいは事業所ごとに勤務時間帯が異なる会社では、24時間・多拠点で受け付けられる窓口が実務上効いてきます。外国籍の従業員を一定数雇用している会社も検討材料の一つです。

「令和7年10月末時点で、外国人労働者数は2,571,037人、外国人を雇用する事業所数は371,215所であり、令和6年10月末時点(2,302,587人、342,087所)に比べ、268,450人、29,128所増加している。」

「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点、厚生労働省)

自社に外国籍の従業員が相当数在籍している、または今後採用を増やす計画がある場合、多言語対応は検討項目の一つになります。ただしこれは対象となる従業員が一定数いる会社に当てはまる論点であって、日本人従業員が中心の会社にとっての相談窓口の必要性そのものを左右するものではありません。あわせて、ストレスチェックの実施・結果通知・面接指導の申出管理までを一つの仕組みで連携させたい場合も、複数の機能を統合して提供できる規模の大きいEAPが向いていることがあります。

小規模・専門特化型の外部相談窓口が正解になるケース

拠点が一つ、あるいは少数で、従業員の大半が同じ環境で働いている会社では、少人数の担当者と継続的な関係を築ける窓口の方が、相談する側の心理的なハードルが下がることがあります。エスカレーションの経路も、窓口から自社の産業保健スタッフや人事担当者までが単純であるほど、実際の対応が滞りにくくなります。調整すべきシステム連携が少ない分、立ち上げまでの期間を短くできる場合もあります。自社の規模や組織構造が比較的シンプルで、「まず相談を受け止めて、必要な人につなぐ」機能を過不足なく持ちたい会社には、こちらの形が合っていることが多いといえます。

どちらを選ぶにも、契約前に確認すべき質問リスト

規模の大小にかかわらず、契約前に確認しておくべき点は共通しています。第一に、窓口が自社の産業保健スタッフとどう連携するかです。

「当該外部機関において労働者からの苦情又は相談に対し適切に対応することができるよう、当該窓口のスタッフが、企業内の産業保健スタッフと連携を図ることができる体制を整備しておくことが望ましい。」

心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針

第二に、相談したことがどのように扱われ、社内の誰にどこまで伝わるのかです。相談者・行為者双方のプライバシー保護と、相談したことを理由とした不利益取扱いの禁止は、指針が明確化を求めている項目です。

「相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること」

職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)

このほか、以下も見積もり段階で確認しておくべき項目です。

2026年10月1日、何が変わるか——カスタマーハラスメント対策の義務化と今から準備すべきこと

いま検討している相談窓口の対応範囲は、社内のハラスメントだけで足りるとは限りません。2026年10月1日から、顧客等からの著しい迷惑行為への対応と、求職者に対するセクシュアルハラスメントへの対応が、新たに事業主の義務に加わります。

「(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)第三十三条事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(次条第五項において顧客等という。)の言動であつて、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(以下この項及び次条第一項において顧客等言動という。)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、労働者の就業環境を害する当該顧客等言動への対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第三十三条(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)第一項(2026年10月1日施行)

「本改正により、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。」

職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省)

これは社内の人間関係に関する相談とは性質が異なります。相談の相手が「顧客」や「取引先」であること、対応の実効性を確保するための抑止策まで求められていることを踏まえると、いま契約しようとしている窓口が、この範囲の相談も受け止められる設計になっているかどうかは、今月中に確認しておく価値のある論点です。

まとめ:自社に合う相談窓口の選び方

社外相談窓口とEAPのどちらを選ぶかは、まず自社の規模・拠点構成・従業員構成を見て、次に2026年10月からの対応範囲拡大に窓口が対応できるかを確認する、という順番で決めるのが実務的です。まだ見積もりを取る前であれば、自社の相談体制が指針の求める4つの措置をどこまで満たしているかを、社内で一度点検してみることをお勧めします。社外の相談窓口を検討する際に迷う点があれば、お気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

社外相談窓口とEAPは何が違うのですか?

EAP(従業員支援プログラム)は、メンタルヘルスやキャリア、法律相談などを含みうる支援の仕組み全体を指す言葉です。社外相談窓口は、その中の相談受付機能を社外の専門家・機関に委託する形態を指し、EAPの一部として提供される場合も、相談機能だけを切り出して委託する場合もあります。

相談窓口の設置は法律上の義務ですか?

はい。労働施策総合推進法(現行 第30条の2)に基づき、事業主は職場のハラスメントについて労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。この措置は業種・規模を問わずすべての事業主に義務付けられています。

自社で相談窓口の対応をする(内部)か、外部に委託するか、どちらでも法律上は問題ありませんか?

指針は体制の整備を求めていますが、窓口を社内に置くか社外に委託するかは事業主の選択に委ねられています。社外委託は認められている方法の一つです。

2026年10月の法改正で何が変わりますか?

令和7年法律第63号による改正で、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となり、2026年10月1日に施行されます。これに伴い、条文構成にも変更があります。

社外相談窓口の選定を進めている段階でしたら

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出典

  1. 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第33条(令和8年10月1日施行) 原文
  2. 職場におけるハラスメントの防止のために 原文
  3. 事業主が講ずべきハラスメント対策(パンフレット) 原文
  4. 心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(平成27年4月15日 心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号/平成30年8月22日 同公示第3号 最終改正) 原文
  5. 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点) 原文

本記事は一般的な説明です。個別の事案における法令の適用および解釈については、所轄の労働基準監督署、産業保健総合支援センター、または専門家にご確認ください。